2012年 02月 13日
シリアの民衆弾圧ってホント?
シリア報道のウソ
リビアの次はシリア。
「 カダフィー・プーチン・金正日 」でもお伝えしたように、アメリカはオバマ大統領主導の下、 FaceBook、Google、Twitter などのネット会社とアラブのターゲット国の民主化リーダーたちの会合を2010年8月に開催し、アラブの地図塗り替え工作を着々と推し進めています。
チュニジア・エジプトでは、FaceBook、Google、Twitter などで民衆を煽って転覆させ、リビアでは旧王党派に資金・武器弾薬を供給するもカダフィー政府軍に歯がたたないと見るや、フランス・イギリスを中心とするNATO軍の空爆・外人部隊で転覆、今回のシリアでは、自由シリア軍への資金・武器弾薬供給でリビア同様の内戦状態に陥りつつあります。
シリア西部ホムスで、反政府デモを行う人々 2月3日(ロイター=共同)
リビアの時と同様、今回もまたアルジャジーラをも含む世界中のメディアを駆使して「 民衆を弾圧するアサド(カダフィー)」のイメージを世界中の人々に印象づけていますが、この件について、増田俊男さんがご自身の体験を書いています。
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私はイランやシリアばかりかサウジアラビアまで含めた産油国に民主運動家を送り込む国際組織の会合に2度ほど参加したことがあります。勿論、会合の名前と目的は「安全と世界平和」です。昨年の2月エジプトの暴動で旗を振っている民主運動戦士の映像が米系テレビに流れていたのを見て驚きました。
なんと5年前の会合で会った戦士だったからです。
実はシリアで民衆のフラストレーションを利用して反政府運動に駆り立てているのはこうした民主運動戦士なのです。シリアで子供や老人が殺される悲惨な映像を何度も何度も米系テレビが流すのを見ていると、以前何度も何度も流されたある映像を思い出します。
かつてのイラクの大統領サダム・フセインは隣国クエートが、油田が地下でつながっていることをいいことにイラク領の原油を奪っているのを止めるように抗議したところクエートが一切聞く耳を持たなかったので軍事行動を起こしたことがありました。アメリカはイラク攻撃の口実を見つけたとばかりに即座にイラクの対クエート侵略戦争だと宣言、国連安全保障理事会に対イラク軍事制裁決議をはかったのですがロシア等の反対で否決されました。
米系テレビはイラク兵士が赤ん坊を殺害している映像と目撃していた少女が泣きながら証言する模様を繰り返し、繰り返し流しました。
ナイラという15歳のクウェート人少女が
米国議会下院 公聴会で
クウェートの産婦人科病院で目撃した
300人以上の乳児虐殺事件を涙ながらに証言
http://www.h2.dion.ne.jp/~mogiseka/article/070624PRwar.html
結果、世界中の非難がイラクに向けられアメリカは堂々とイラク攻撃を果たしたのです。後に少女はクエ―トの駐米大使の娘さんと分かり(しかもクェートには行ったこともない)、また彼女は、映像はアメリカの広告会社のスタジオで録画したものであることを告白しました。
増田俊男の「 愉快な暴言 」2012年2月8日
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リビア・シリアでもこの時と全く同じ手法が採られています。
つまり、リビアやシリアはこんなにひどい独裁者の国なんだ。ということを世界中のメディアを駆使して世界中の人々に印象づけているのです。
・ 湾岸戦争の時のオイルまみれの鳥とクェート大使の娘 のヤラセ
・ イラク戦争の、大量殺戮兵器情報の 捏造
・ リビア:カダフィー大佐による民衆弾圧 の嘘 (「 カダフィー・プーチン・金正日 」参照)
いつも手口は同じです。
そして次なるターゲットがシリア。
アサド大統領がシリアの民衆を弾圧しているとの報道に関して、田中宇さんが、次のようにレポートしています。
シリア情勢について米欧日マスコミは、エジプト型の市民の反政府デモを、
アサド政権の軍隊が弾圧して死者が出ているという論調で報じている。
だが実際は、カタールやサウジアラビア、トルコ、欧米によって支援されて
武装したイスラム主義の民兵団が、各所でシリア軍と戦闘しており、
事態は「民主化弾圧」でなく「内戦」だ。
米諜報機関系の分析サイトであるストラトフォーによると、
シリアの反政府ゲリラ(Free Syrian Army)は、
レバノンから武器などの物資を搬入している。
反政府ゲリラ:自由シリア軍 @ホムス
カタールの機関が昨年末に行ったネット上の世論調査によると、
アラブ全体の1012人の回答者の81%がアサド大統領は辞めるべきだと答え
シリアの回答者は97人で、そのうち55%がアサド続投を支持し、
45%が辞任すべきと答えた。
カタールに本部があるのが、湾岸戦争で一躍有名になった衛星TVアルジャジーラ。
アルジャジーラのオーナーはカタール首長で、アラブ連盟がシリア非難決議や平和維持軍派遣決議を繰り返しているが、カタールはサウジアラビアを凌ぐシリア非難の急先鋒となっていますが、そのカタールの機関の世論調査です。
アラブ連盟は、昨年末から1カ月間、シリアに160人の調査団を派遣し、
シリア軍が市民を弾圧していないかどうか調査し、報告書を作った。
これは最も本格的なシリア情勢の報告書である。
それによると、シリアでは政府支持と反政府の両方のデモが行われ、
双方のデモの参加者が衝突して小競り合いになることがあったものの、
政府軍がデモを弾圧していることを確認できなかった。
半面、反政府ゲリラがシリア兵を殺害しているとか、
反政府ゲリラが市街地に拠点を持っているシリア中部の都市ホムスでは、
ゲリラが検問所を作って町に搬入される途中の食料を止めており、
食糧不足になっていると書いている。
調査団には、アラブ連盟を代表して、アルジェリア、エジプト、オマーン、
カタール、スーダンの5カ国が要員を送り込み、
4カ国が報告書の内容を支持したが、カタールだけは内容に反対した。
シリアの反政府ゲリラを強く支援し、アサド政権の転覆を狙うカタールは
「シリア軍が市民のデモを弾圧していることが確認できなかった」とする
報告書の内容を認めるわけにいかなかった。
欧米マスコミが報じるような「シリア軍が市民のデモを弾圧していた」
という内容である必要があった。
カタールは、ちょうど輪番制のアラブ連盟の議長国であり、
報告書の英訳を禁じたり、アラブ連盟のウェブサイトへの掲出を阻止したりして、
報告書が広報されることを防いだ。
結局、報告書は米国のマスコミにリークされ、英訳され報道された。
ユーチューブなどネット上には、ホムスなどシリア各地での銃撃戦の様子や、
殺された市民の遺体を映した動画が出回っている。
情景を英語で説明する若いシリア市民は「活動家」と称する反政府派の市民。
いかにアサド政権が悪者かが、動画で描かれているが、
実際のところ、誰が市民を殺しているのか、確定できない。
シリアでは「シャビーハ」(shabiha)と呼ばれる正体不明の武装集団が
各地で跋扈し、デモに参加する市民を殴ったり殺したり、
市街地で銃を乱射したり、建物を破壊したりしている。
反政府派によると、シャビーハはアサド家直轄の、
アラウィ派(スーフィ・シーア系)で構成された政府肝いりの犯罪集団で、
シリア政府はシャビーハに反政府運動を弾圧させているという。
しかし、以前アレッポで摘発されたシャビーハは、
アラウィ派でなくスンニ派だった。
シリアの軍や警察はアラウィ派が握っており、アサド家もアラウィ派だが、
シリア人の70%はスンニ派。
欧米やカタールがシリア政府の転覆を狙って
反政府ゲリラの戦力を支援しているという現実からすると、
殺し屋部隊:シャビーハは反政府ゲリラの一部であり、
政府傘下の悪党のふりをして反政府デモ隊を殴りつけ、
内外でのシリア政府のイメージを悪化させようとしているとしても不思議でない。
シリアの反政府ゲリラを支援してアサド政権転覆を画策しているのは、
米英仏のNATO諸国と、カタールとサウジアラビア等だ。
彼らがアサド政権を転覆したいのは、イラクでスンニ派が弱いまま、
親イランのシーア派の政権で安定し、イランの傘下となって
ペルシャ湾岸でのイランの台頭に拍車がかかる。
シリアを政権転覆して反イランに転じさせれば、
イラクを内戦に陥らせて弱体化でき、イランの台頭を防げる。
シリアの政権転覆をめぐる闘いは、実はイランとの闘いである。
以上、
田中 宇 「 シリアの内戦 」2012年2月9日 より抜粋。
今回のシリア情勢で目立つのが、湾岸諸国の動き。
アラブ連盟は12日、カイロで外相会合を開き、以下の採択を行ったとの報道。
シリアに平和維持軍求める決議採択 アラブ連盟 (朝日新聞 2月12日)
(1)暴力停止を監視するため、国連安保理にアラブ連盟と国連合同の
平和維持部隊を派遣する決議を出すよう求める
(2)アサド政権との外交協力関係を中断する
(3)シリアへの経済制裁を行う
(4)支援のためシリア反体制派と協議を行う。
反体制派各派には団結と相互対話を呼びかける
※ 連盟がシリアに派遣している監視団は活動を終了する。
シリアに敵対的なアラブ諸国の地図
アラブ連盟シリア資格停止決議に抗議するシリア:ダマスカスのデモ
2011年11月13日
イラン PRESS TV
http://www.presstv.ir/detail/210597.html
現在、アメリカの空母は「エイブラハム・リンカーン」が、ホルムズ海峡に、「カール・ビンソン」がパキスタン沖に、1月にシリア沖に展開してた最新鋭艦「ジョージ・ブッシュ」は2月8日時点でアメリカ東海岸に。
空母 : エイブラハム・リンカーン
アメリカ空母&揚陸艦 展開状況 2月8日現在
空母が3隻イラン周辺に集結したら危険信号。
アメリカスペイン戦争のメイン号事件やベトナム戦争のトンキン湾や真珠湾みたいに、またぞろ同じように、アメリカ海軍のオンボロ船が大火事になったり爆発騒ぎが起きたりして、イランによる攻撃と認定されて戦端が開かれるのかな?
或いは、手口がミエミエなんで、もうちょっと手の混んだ真珠湾や湾岸戦争や911みたいな変形バージョンとなるのかな?
いずれにしても、もうそろそろ地球人類はこんな馬鹿馬鹿しくもミエミエの戦争はもう卒業にして、新しい文明の展開に移行する段階に至っています。
PS.
アサド大統領のアスマ夫人は、シリア人を両親を持つイギリス生まれイギリス育ち・ロンドン大学キングズカレッジ出身のイギリス・シリア2重国籍人。 ドイツ銀行のヘッジファンド・マネージメント部門の後、JPモルガンでM&Aを手がけたキャリアウーマン。
オックスフォード出身の小和田雅子さんを皇太子の元に送り込んだイギリスのしたたかな戦略が偲ばれます。
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