アーティスト・インフレーション

       
       
      
                    アーティストとミュージシャン

                         新文明のアート



インフレーションとは、経済用語ですが、宇宙論の世界においても数学的なつじつま合わせのためだけに血迷ったボケ・サイエンティストによって編み出されたインフレーション宇宙論なんてのもありますが、インフレーションは芸術や音楽の世界でも起きています。

「 ミュージシャン 」のことを「 アーティスト 」と呼び始めたのはいつ頃からでしょうか?

割と有名なチャネラーおばさんと位山に登った時、参加者の女性から「 アーティストですか? 」って興味津々風に尋ねられ、「 何も作らない 作家 です。」って応えたら、なんだか話しが噛み合わず、彼女はシラケてどっかへ行ってしまったのを思い出しますが、これが2005年のことだったので、おそらく、2003年ごろから、「 ミュージシャン 」のことを「 アーティスト 」って言い始めたように思います。

「 ART 」とは、「 ARM : 腕 」のことであり、工芸や絵画など腕・手技で作るもののことを「 ART 」と云います。
その腕を使って高度な作品に仕上げるのが、「 職人:ARTISAN:アルティザン 」
その技巧を極限まで推し進め、技術の壁を超えて深遠な宇宙を垣間見せてくれる作品を作る人を「 ARTIST 」と呼び分けられて来ました。

一方、「 MUSIC 」とは、ギリシャの文芸を司る女神「 Muse:ムーサ:英語読みでミューズ 」から来たもの。 尤も「 文芸 」を表す古代エジプト語、或いはカルデア語から「 ミューズ 」と云う神が誕生したのかもしれませんが。
文芸とは、音楽・詩作・言語のことです。
詩は詞であり、そのまま声楽でもあります。

腕のARTと、喉のMUSE。

これだけ明確な違いが出自にあるのになぜ、みんな
ミュージシャンのことをアーティストと呼ぶようになったのでしょう?

それは、ARTが死滅したからです。

1985年ごろ、ARTは死滅しました。
こう言い放つと、中途半端なアーティストは牙を剥いて怒り出しますが。。。(^o^)ゞ
その最後の輝きを放ったのが、西ドイツの新表現主義でした。
20代のアーティストで来日し、大相撲の絵も描いていますが名前が思い出せない、、、、、日本では、ポストARTと云えるダンボールアートの日比野克彦が活躍していた時代です。
最後のコンセプチュアル・アーティスト:ヨーゼフ・ボイスも1986年1月にこの世を去ります。

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                 ヨゼフ・ボイス と 作品 portalen portalen

         ボイスのアート集団 : フルクサスのメンバーだったのが小野洋子。
     そのフルクサス・小野洋子のロンドンのギャラリー展示会にジョン・レノンがやって来て
        高い脚立に登って虫眼鏡で天井を覗いた時見えたのが 「 YES 」の文字。
          この時、小野洋子はジョン・レノンが有名人とは知りませんでした。

                西ドイツの 「 緑の党 」 はボイスが生みの親。



当時、最先端の ARTは犬や羊や牛の死体の展示でした。
犬や羊や牛の死体 ( 本物 )は、程なくして人間の死体 ( 写真や造形物 ) へと変わります。
まさに、ARTは、自らの死を死体をもってその最期を飾ったのです。

こうして、ARTが死滅して、ARTはみんなに解放され、みんなのものになりました。
コンプレックスの塊と化していたミュージシャン( 後述 )による「 アーティスト 」の称号の簒奪 = 「 アーティスト・インフレーション 」 の始まりです。

それまで「 ARTとはなんぞや? 」と、ほとんどの人には「 ART 」の本質が理解出来ず、「 ART 」は一般からは畏怖とあこがれの的となっていました。 自称「 Artist 」と称している人は掃いて捨てるほどいましたが、本当に「 ART 」の領域に達する作品を作っている人、それを理解できる人はごく少数に限られていたのです。

ところが、ARTの死滅を境にダンボールアートや生クリームアートやマンガアートやフィギュアアートが登場するようになって、ARTは親しみの持てるPOPな存在となりました。

80年代後半のバブルもARTの一般化を推し進めます。
金にあかせて最先端の(?)アートを不動産や商事・銀行が買いあさり一般への露出が極端に増えたのもこの時代です。

しかし、「 ART 」の人気化と裏腹に、ARTは死滅後10~15年をもってその威厳を消失してしまいます。


一方の音楽は、ARTの死滅とほぼ同時期からリリースメディアが、LPレコードからCDへと移行し、音楽の質が暴落してしまいました。
それまでの一級のミュージシャンのLPはA面B面、ほとんどの曲が名曲で、ダメ曲は2~3曲しかありませんでした。
ところがCDに移行した途端、聴ける曲が2~3曲となり、あとはクズ曲となります。

CDの開発者:井深大さんは後になって嘆いていたそうです。
音楽と云う文化を破壊してしまったと。
CDは、人間の可聴領域外の高音域と低音域をカットし、更にデジタル圧縮をかけるため、可聴領域の周波数帯も間引きしていたのです。
これが「 音楽の質 」に大きな影響を与えてしまいます。
人間は耳だけで音楽を聴いているわけではありません。
「 皮膚呼吸 」と同じく、皮膚でも、臓器でも、身体全体で音楽を感じ取っていたのです。

CDが一般に売られ始めたのが1984年頃?

1978年、SEX PISTLESがデビューし、PUNKは、NewWaveに移行していました。 1984~5年、そのニューウェーブも失速し始め、やがてスクラッチからヒップポップが台頭するようになります。

スクラッチは、ピストルズのプロデューサー:マルコム・マクラーレンやNYパンクのビズ・ラズウェル、GoldenParonomisあたりが収録したのが最初でしょう。
この技法は、1950年代:ビートニクスのウィリアム・バロウズのCutUpに端を発するもの( CutUp はバロウズの小説「 裸のランチ 」から始まります。)です。

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            左 : カットアップの手法を確立した 「 裸のランチ 」 1959年
                初刊本の装丁がカッコ良かったのになぁ。。。。
                ロートレアモン ~ イェーツ ~ ツァラ ~ バロウズの系譜

            右 : まるで判ってないお馬鹿なアレン・ギンズバーグとの
               アヤワスカを世界に紹介したペルー・ボリビア旅行往復書簡

また、ヒップポップも、マルコムがPUNKで始めたのが最初です。
ピストルズのジョニー・ロットンの Flower of Romance も聴き様によってはヒップポップの走りと云えなくもありません。
そうして、グレース・ジョーンズやアダム・ジ・アンツ、ダブ・ファンクの(名前忘れた)などによって、ヒップポップのアーキタイプが形成されます。
PUNKの遺産はいつの間にか黒人ヒップポップの中で消費されていくようになります。

1985年頃を境に、欧米音楽もまた死滅します。

当時日本では、Rock Spirits を体現できているロックバンドは皆無に等しい状態でした。(YMOなんてのは、クフトワークの陳腐なコピーだし、当時ブルースロックと名打ってデビューしたサザンオールスターズなんてのは鼻から、そしてその後も単なる歌謡曲でしかありません。)
単なる技巧まやかしBANDばかりが横行していました。

その後、バブルの中で日本の音楽シーンはエイベックスが台頭。
アメリカでは、ヒップポップ全盛となります。

MUSEなき音楽シーン。
ミュージシャン(特に日本の)の自信のなさ。
そして死滅して放り出されている「 ARTIST 」の称号。

MUSE(音楽美の神)が宿れなくなったミュージシャンのコンプレックスと、ARTの死骸が結婚したゾンビ。 それがミュージックの「 アーティスト 」です。

それにしてもミュージシャンたちは、アーティストと呼ばれて恥ずかしくないのでしょうか?
その神経が理解できません。
今やこの日本発祥の簒奪ウィルスは、英語の国 : アメリカにまで蔓延しています。


西洋ARTは、ICONから始まります。
コンピュータ用語では「 アイコン 」。
ART用語では「 イコン 」です。
つまり、聖書の物語や聖者を表したもの。
十字架やイエスやマリヤやガブリエルの絵画( イコン )は、やがて皇帝や国王、貴族の肖像画となり、18世紀、一般民衆が描かれるようになります。
そこには江戸の版画の影響があるのかもしれません。
この時代、北斎の「 藍色(ラピスラズリ) 」がヨーロッパで始めて使用されます。
その一般民衆や、風景画をコンセプチュアル(概念的)に解釈し直して、キャンバスに色止めしたのが「 印象派 」、1800年代後半のことです。
1915年に第一次世界大戦が勃発し、中立国のチューリッヒに集まったトリスタン・ツァラたちによってキャバレー・ボルテールでDADAがスタート。

     キャバレー・ボルテールから数軒離れた肉屋の2階に下宿していたのがレーニン。
     レーニンはキャブスには、行ってないだろうなぁ。。。。。w


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               1916年2月5日オープンの再現キャバレー・ボルテール
                         画像出典 : SHIFT

このDADAやパリのマルセル・デュシャン等によって、「 コンセプチュアル・アート 」が始まります。 DADAはやがてシュールレアリスムへと変遷し、コンセプチュアルアートは、象徴的な言い方をするなら「 デュシャンに始まり、ボイスに終わる 」と、云ってもいいでしょう。

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                        マルセル・デュシャン
       左 「 階段を降りる裸体NO.2 」 1912  出典: 松岡正剛の千夜千冊 
       中 レディ・メイド 「 泉 」 1917        出典: Piano Space
       右 「 彼女の独身者によって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)」 1915~23
                                   出典: jiji-ex


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                       トリスタン・ツァラの著書
                 左 : DADA Phone 1920 出典 chocochips
                 右 : DADA宣言 1916    出典 松岡正剛の千夜千冊

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              「 シュルレアリストのグループ 」  マン・レイ撮影 1930年
     後列左からポール・エリュアール、ジャン・アルブ、イヴ・タンギー、ルネ・クルウェル
           前列左からトリスタン・ツァラ、アンドレ・ブルトン、サルバトール・ダリ、
                     マックス・エルンスト、マン・レイ

                     画像出典 : My Art Literacy

こうして、ARTの死と共に、その用語の漂流が始まったのです。



ARTは1985年をもって死滅。
音楽も1985年に死滅。
純文学は、一足早く1970年代に死滅します。
当時、純文学然としたいわゆる文学小説にはすでに「 純文学 」の香りはなく、むしろアメリカで最期の輝きを放ったSF小説の中に「 純文学 」やその哲学性を見出すことが出来ます。
日本では、その作品を巡って芥川賞が空席となった1976年の村上龍のデビュー作 「 限りなく透明に近いブルー 」あたりをもって死滅します。 文学というものがまるで理解できてない文化メディアの代理支配人:現代風に云えば文化界の竹中平蔵こと:丸谷才一がその死刑執行人と云っても差しつかえないでしょう。
詩はさらに前に死滅しています。
映画芸術(映像文学)も、1980年の「 アギーレ 」「 ドイツ・青ざめた母 」あたり
をもって死滅。 以後はハリウッドの商業プロパガンダ映画一色の世界となります。

つまり、産業革命以来の、西欧文化の優れた部分は1980年代前半にことごとく死滅しているのです。
それ以降のそれぞれの分野は、芸術性を失い、単なる大衆操作のためのアミューズメントとなってしまいました。

西欧ARTは、「 ICON に始まり、死体に終わりました。」
それは、偶像崇拝を禁じたユダヤ教に背信する、ローマカトリック法王庁の「 偶像 = ICON 」 解胎の歴史でもあります。
聖画 → 王の肖像画 → 人物・風景画 → 光の解体 → 概念の解体 → 死体の陳列
まさに、キリスト教権力解体の歴史と機を一にしています。

そして今、まったく新しいサイエンスの解釈や哲学、それらを利用した技術が勃興しようとし始めています。
そこからは、想像もつかないとてつもない「 新しい文明 」が到来します。


                     「 意識の相転移 」

         ※ 相転移とは、通常、水の相転移のことを指します。
            氷の水分子には、液体の世界のことは想像もつきません。
            気体なんて、なおさらです。


人類全体が意識の相転移に曝され、意識の進化が始まります。
その時、文化はまた想像もつかないような新たな創造を始めることでしょう。




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by nueq | 2012-09-12 18:41 | 文化

覇権文明の終焉と 新しい地球文明を デザインする


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